第9話 すみれとさくらと言葉のチカラ

車のフロントガラスに左折を指示する矢印が表示された。
(この時代の自動車は、フロントガラスそのものが、カーナビのディスプレーになっています)
「次の交差点を左ですね」
ママが助手席に座っている張(チャン)教授に確認する。
「そうですわ。ほんとうにありがとうございます。わざわざ車で送っていただいて」
「どういたしまして。同じ方向ですから」
その日、あたしとママ、衛(ウェイ)くんと張教授は横浜までお買い物に出かけた。
きっかけは、クラブの帰り道で、ロープのカードを封印した結婚式の話をしたときのこと。

『そうなんだ。で、あたしに聞きたいことって、なに?』
『表演服を作りたいんだけど、どこで作ればいいのかな?日本じゃ、良い店なさそうだし・・・』
『あ、それなら、いいお店あるよ。あたしやパパのを作ったお店、今度、紹介してあげる』
『木之本さんのお父さんも、中国拳法やるんだ』
『うん、すっごく強いよ。それに・・・』

衛くんは、中国拳法がとても強い。でも、日本でもできるとは思っていなかったらしく
練習服とかを日本に持ってきていなかったんだって。
でも、一応、友枝小学校にはクラブがあるので、日本でも服を作りたくなったみたい。
それで、あたしがママに話して、今日一緒にお店に行って表演服と練習服を注文してきたんだ。
「本当、良いお店を紹介していただいてありがとうございます。
私は、あまり詳しくないものですから・・・」
車の中では、ママと張教授のおしゃべりが途切れることはなかった。
もう、すっかり主婦の会話が続いている。

ピン!
警告音が鳴ると、フロントガラスに次の交差点で曲がる方向が表示された。
「え?この方向?」
ママはちょっと驚いたようだった。
「なにかありましたの?私、カーナビの入力を間違えましたか?」
張教授が、心配そうにママに尋ねた。
「そ、そんなことはありません」
ママが答えた。そんなママに、張教授が声をかける。
「あの、せっかくですから、よろしかったら、うちでお茶でもいかがですか?」
「よろしいんですか?」
「ええ。木之本さんさえよろしければ。お茶もケーキもございますのよ」
張教授があたしの方を向いて、聞いた。
「すみれさんはどう?紅茶はお好きですか?」
「は、はい。大好きです」
思わず、あたしは答えた。
「それは、よかったわ。うちのエドワードは紅茶よりコーヒーが好きで、
一緒にアフタヌーンティーを楽しめないで、さびしい思いをしてますの」
あたしは、衛くんの顔を見た。そういえば、学校で衛くんが紅茶を飲んでいるのを見たことがない。
「衛くん、イギリスに住んでて、紅茶きらいなの?」
「そ、そうでもないんだけど・・・」
衛くんは、困ったような顔をしていた。
「この道まっすぐで、よろしいんですね?」
ママが張教授に聞いた。
「ええ。それが何か?」
「ひょっとしたら・・・すっごい偶然かも・・・」

あたしたちは、マンションの駐車場で車から降りた。
張教授の案内で、エレベータを上がっていく。
「まさか、そんな」
「ママ?」
あたしは、ママの様子がおかしいことに気がついた。
緊張しているというか、ドキドキしているというか、そんな感じだ。
張教授が、あるドアの前で止まった。
「さぁ、この部屋ですの。お入りになってください。・・・どうかなされました?」
「す、すみません」
「どうしたの、ママ?」
あたしは、あわててママに駆け寄った。ママの目が涙でうるんでいる。
「すみれちゃん、このお部屋、小狼くんが、日本に来た時、住んでいたお部屋なの」
「えー!」
あたしは大きな声を上げてしまった。
そして、張教授と衛くんは顔を見合わせた。

「そうでしたの。ご主人が、昔、このお部屋に住んでらしたんですか」
ママの話を聞いた張教授は、すごい偶然にびっくりしていた。
「私たちは、風水で見て、このマンションを選んだのですけど・・・
これも何かの縁ですわ。とにかく、お入りください。お茶とケーキの用意をしますから」

「ママ、ここにパパや苺鈴おばさんや偉さんが住んでいたんだよね」
「そうよ。ママがまだ、友枝小学校に通っていたころね」
「ほえ〜」
あたしは、通された応接間を見渡した。ここにパパが住んでいたんだ。
そのころ、ママはクロウ・カードを集めていて、パパもクロウ・カードを集めに日本にやって来て、
そして、ふたりは出会ったんだ。それが、あたしの生まれるずぅーっと前の出来事。
「どこがパパのお部屋だったの?」
「間取りが変わっている。小狼くんの後に住んだ人がリフォームしたんだよ、きっと」
「そうかぁ」
あたしとママが話をしていると、衛くんがティーカップを運んで来てくれた。
「今、おばあちゃんがお茶とケーキを持ってくるから」
「お待たせしました」
張教授がティーポットと、続いてケーキが乗った3段ケーキスタンドを持ってきてくれた。
「すっごーい!」
「本当は、サンドイッチなども用意するんですが」
「いいえ、十分です」
そして、4人でお茶を囲んでのおしゃべりが始まった。衛くんだけは、コーヒーを飲んでいたけど。
ママと張教授のおしゃべりは、ミルクティーの入れ方になった。
「木之本さんは、ミルクを先に入れますの?」
「私は後からですけど」
「まぁ、それはいけませんわ。大体、ミルクを先に入れないと・・・」
ミルクティーのミルクを先に入れるか後にするかは、紅茶好きにとっていまだに決着がつかない
大問題らしい。ふたりの話は、しばらく続いていた。

楽しいアフタヌーンティーが続き、もうそろそろというころ、ママのケータイの着メロが鳴った。
「はい、木之本です。あ、千春ちゃん、どうしたの?え?山崎くんが入院?」
ママの表情が厳しくなった。
「わかった。じゃ、病院でね」
ケータイを切ると、ママは張教授に言った。
「今日はおいしいお茶をありがとうございました。今、友人が入院したとの電話がありまして
これからお見舞いに行こうと思いますので、そろそろ失礼したいと思います」
「まぁ、それは。お友達にも、よろしくお伝えください」
あたしとママは、もう一度アフタヌーンティーのお礼を言うと、車に乗った。

「ママ、電話で言っていた『山崎くん』って『すあま』さんのことだよね」
「そう。これから、ママは友枝病院に行くから」
『すあま』というのは、ママの同級生だったタレントの名前。最初はうそつき漫才でデビューして
今では映画やドラマのバイプレーヤーとして賞を取ったりしている。
デビューしたころは、同じ同級生の三原さんとコンビを組んでいたんだけど、
ドラマの仕事が増えてからは、三原さんがマネージャーをしているそうだ。
「すみれちゃん、悪いけど、警備の問題があって、病院に入れるのはママだけなの。
次の交差点で降ろすから、先におうちに帰ってくれない?」
「うん、わかったよ、ママ」

その後、友枝病院にて。
「山崎くん、大丈夫?」
「さくらちゃん、来てくれたのね」
山崎の病室には、三原千春に、寺田利佳と柳沢奈緒子がいた。
「・・・」
ベッドの中で山崎が、聞き取れないような声でぼそぼそ何か言っている。
げっそりとして、まるで魂が抜かれたかのようだ。
「山崎くん、どうしたの?」
「それが・・・お医者さまにもわからないって」
「えー?どうゆうこと?」
千春の話によると、1週間ほど前から急にネタが受けないと山崎が悩みだしたということだった。
ドラマの仕事が増えてからも、山崎はミニシアターでのうそつきトークショーを続けていた。
それが、自分の芸の原点でもあり、観客からの生の反応が自分の芸の肥やしになると
信じていたからだ。
それが・・・その日を境に、まったくと言っていいほど観客の反応がなくなった。
とっておきのネタもまったく受けない。
ショーが、最後まで白く寒いものになってしまったのだ。
「たまには、こんな日もあるわよ」
千春はそうなぐさめたが、そんなトークショーが2回、3回と続くと、なぐさめることなんて
できなくなった。

「確かに、山崎くんのうそが突然、ぜんぜんつまんなくなっちゃったの。
ううん、つまんないだけじゃない。山崎くんの話すこと全部が白々しく聞こえちゃって・・・」
結婚していないとはいえ、山崎との付き合いは30年近い。
その30年のなかで、こんなことは初めてだった。
2,3日たつと、追い詰められた山崎は食事も摂らなくなった。
そして今日、千春は、あっという間に衰弱した山崎を入院させたのだ。
「検査では異常は見つからなかったし、お医者さんは精神的なものだろうって・・・」
医者にもどうしようもなかったのだろう。感情を失ってしまうような病気はあるが、
話す言葉が白々しくなる病気など、考えられないのだから。
マスコミをシャットダウンした千春は、さくらたちを呼んだ。
古くからの友人である彼女たちと話をすれば、
山崎の言葉に感情を取り戻すことができるかもしれない・・・
そんな根拠のないことを思いついたからだ。
「でも、山崎くん、わたしたちのことわかんないみたい・・・」
奈緒子は肩を落としていた。となりで、利佳もうなづいた。
「そんな・・・山崎くん」
さくらが声をかける。
「・・・すあまっていう和菓子はね・・・昔はものすごうく大きかったんだよ」
彼の返事は、コミュニケーションをとろうとするものでなかった。
けれど、さくらにはわかったことがあった。
(魔力を感じる。クロウ・カードが山崎くんの近くにいたんだ)

しばらく、さくらは千春たちの話の聞き役に徹していた。
(これは、クロウ・カードのしわざだ。でも、そんなことは言えないし・・・)
ふっと、「気配」がした。
(いる。この病院にクロウ・カードがいるよ)
さくらは、慣れないうそをついた。
「ごめんなさい、千春ちゃん。そろそろ失礼しないと・・・実は、子供たちを近くのファミレスで
待たせているの」
「あ、あたしこそ気が付かなくて」
まだ結婚していない千春には、「子供」という言葉に弱い。
「じゃ、何かあったら、また連絡ちょうだい。私にできることなら、何でもお手伝いするから」
「ありがとう」
「山崎くん、すぐによくなるよ。千春ちゃんがいるんだもん。絶対だいじょうぶだよ」
「ありがとう、さくらちゃん。・・・不思議だね」
「なにが?」
「さくらちゃんのその言葉。私には、なんとかしてくれる魔法使いの呪文みたいに聞こえるんだ」
ちょっと驚いたさくらは、もう一度、うそをつくと病室を出た。
「そんなことないよ。山崎くんを治す魔法を使うのは千春ちゃんだよ」

そして、部屋を出ると、
「いた!」
気配をたどっていくと、クロウ・カードは簡単に見つかった。まるで、待ち構えていたようだった。
無邪気な表情で、空中からさくらを見下ろしている。その姿は、ボイスのカードに似ていた。
「山崎くんを元に戻しなさい!」
さくらはまわりに人がいないことを確かめると、星のペンダントを取り出した。
杖を封印解除(レリーズ)するために、クロウ・カードを集めていたころの姿に戻る。
大人から子供になる様子を、カードは興味深そうに見つめていた。
「星の力を秘めし鍵よ」
(ほぇ?)
呪文を唱えながら、さくらは違和感を感じた。自分の呪文が、とても虚ろに聞こえたからだ。
「真の姿を我の前に示せ」
呪文を続けたが、違和感がなくならない。ペンダントも宙に浮かばない。
「契約の下、さくらが命じる」
「封印解除(レリーズ)!・・・!?」
星のペンダントは、ペンダントのままだった。
「封印解除(レリーズ)!」
呪文を繰り返したが、やはり、ペンダントは封印の杖に変わらない。
「・・・どうなっているの?」
「キャッキャッ」
そんなさくらを無邪気に笑うと、カードは飛んで行った。
「待ちなさい!」
さくらはカードを追いかけた。スピードはカードの方が速い。
だが、なぜか、さくらにはカードの行き先がわかっていた。
(あの子、ペンギン公園に向かっている)


家に戻ったあたしは、算数の宿題をしていた。
「なんや、すみれ、こないな分数の割り算もできへんのかぁ?」
「もう、ケロちゃんは黙っていて!・・・ほぇ?」
「どうした、すみれ・・・これは?!」
「これは・・・クロウ・カードの気配」
その時、あたしのケータイに電話がかかってきた。
「ママからだ。はい、すみれです。ママ、どうしたの?」
「たいへん、すみれちゃん、クロウ・カードよ!」
「ママも?あたしも、ちょうど今、カードの気配がしてびっくりしているところなの」
「今、車でカードを追ってる。ペンギン公園の方に来て!」
「わかった。ケロちゃんと一緒に行くよ」
あたしはケータイを切った。
「よっしゃぁ、カードキャプターの出動やで!」
「うん!」

あたしは呪文を唱えだした。足元に魔方陣が現れる。
「光の力を秘めし鍵よ・・・ほぇ?」
ピアスが宙を浮かばない。あわてて呪文の続きを唱える。
「真の姿を我の前に示せ。契約の下、すみれが命じる」
あたしの唱える呪文が、不思議と虚ろに聞こえた。
「封印解除(レリーズ)!」
けれど、ピアスは杖に変わらない。
「封印解除(レリーズ)!、封印解除(レリーズ)!・・・ケロちゃん、杖に変わらないよ!」
「これは・・・呪文の力が奪われとる!」
「えぇ!そんなぁ!」
「今度のカードは手強いっちゅうことやな。とにかくペンギン公園へ行って、さくらと合流や」
そう言うと、ケロちゃんは光に、続いて羽に包まれた。
「すみれ、わいの背中に乗り。ペンギン公園までひとっ飛びするでぇ」
真の姿になったケロちゃんが言った。

「いた!ママだ!ケロちゃん、ママのそばに降ろして!」
あたしは、真の姿になったケロちゃんの背中に乗ると、ペンギン公園に向かった。
そして、上空からカードを追いかけているママを見つけたんだ。
「すみれちゃん、来てくれたのね」
「カードは?」
「あそこ」
少し息を切らしているママが指差した先に、キャッキャッと笑い転げているカードがいた。
「・・・楽しそうね」
「そう、ずぅーっとおっかけっこしてたの・・・」
「さくら、カードを使えば、あんなんすぐに捕まえられんのに・・・まさか?
さくらも呪文が封じられとんのか?!」
「みたいね。ペンダントが杖にならないの」
「あたしもだよ」
「すみれちゃんも?」
「あたしたち、魔法が使えなくなっちゃたのかな?」
「いんや。さっき、すみれの足元には魔方陣が現れたし、さくらもちゃんと昔の姿に戻れとる。
呪文だけが封じられてるみたいや」
「・・・ということは」
「カードの力なしで、あいつを捕まえなきゃあかん」
「そんなぁ〜」
そんなあたしたちをからかうように、カードは笑った。
「あっ!待ちなさ〜い!」

それから、あたしたちとカードのおっかけっこが始まった。
カードがちょこまかと動き回り、あたしたちが追いかける。
まるで、昔のギャグアニメのようだった。
もう少しというところで捕まえ損ねて、ケロちゃんは何度も地面に激突したし
あたしとママも、カードを捕まえようとして、何回も正面衝突をした。
そんなあたしたちを見て、カードはあっかんべーなんてしている。
「ママ、あたしたちって・・・」
「・・・完全に、遊ばれている」

「すみれちゃん、そっちぃ!」
ママの声が聞こえ、あたしの目の前をカードが横切った。
「えい!」
思わず、あたしはカードを捕まえようとジャンプした。
けど、もう少しというところで、今度もカードはあたしの腕をすり抜けた。
「すみれ!」
「すみれちゃん!」
ふたりの声を聞こえた。そして、あたしは・・・
ざっぷ〜ん!
・・・池に落ちていた。

「ほぇ〜!今日の服、お気に入りなのにぃ!」
その時、不思議な声があたしの耳に聞こえてきた。
(・・・あなたは、呪文を唱える別の方法を知っているはずです・・・)
「そうか!」
あたしは立ち上がった。
その時、池の中央に向かって、あたしから10メートルぐらい離れたところにカードはいた。
やったやった!って感じでうれしそうに空中で小躍りしている。
(笑っていられるのも、今のうちよ)
ひざまで水につかっている、あたしの足元に魔方陣が揺らぎながら現れた。
カードは、お手並み拝見って感じであたしを見つめている。
あたしは、「別の方法で」呪文を唱え出した。

「・・・隠蔵著光明力量的『鑰匙』ロ阿」
ピアスが、耳からはずれて宙を移動する。大丈夫だ。
「在我面前顕示真正的力量!跟イ尓訂下訳定的小菫命令イ尓!」
「封印解除!」
あたしは封印の杖を手にした。
呪文を封じられないことがわかって、カードはあわてて逃げようとする。
「趁現在、小菫!」
ケロちゃんが中国語で叫んだ。
「ロ恩!」
あたしは、ウィンディのカードさんを取り出した。
「風ロ阿!快変成懲戒的鎖錬!『風』!」
逃げようとするカードを、ウィンディさんはらくらくと捕まえる。
「快点変回イ尓原來的様子!古羅ロ吉!」
封印の杖を振り下ろすと、まもなく封印されたカードがあたしの手に飛び込んできた。
言(ワード)というカードだ。
「成功ロ拉!」
はしゃぎまくるケロちゃんに、あたしは言った。
「もう、日本語でいいんだよ」


「どうゆうことですの、エドワード?」
「ワードのカードは、もともと掟を破った魔術師の魔法を無効にするために創られたカードなんだ。
ところが、出来上がったカードは、魔法だけではなく、言葉の持つ、人の心を動かすチカラまでも
無効化できるようになっていたんだ。今回、あのタレントが入院したのはそのためさ。
ワードのカードは、政敵を選挙で落選させるために使われたこともある、強力なカードなんだよ」
「私がお聞きしたいのは、なぜ、すみれさんが呪文を使うことができたかということなんですが」
「ゴールデン・ドーンにカードの作成を命じられたクロウ・リードは、自分に使われた場合に備えて、
中国語の呪文だけは無効化できないようにしたんだ。
すみれさんに与えたヒントは、そのことなんだよ」
ふたりは、さくらたちがあわてて車に乗り込むのを見つめていた。
「すみれさん、風邪をひいてしまいそうですわね」
「ぼくがカードにうまく干渉できなかったせいだ。まだ直接謝ることはできないけど、ごめんなさい」

くちゅん!

「たいへん、すみれちゃん、風邪ひいちゃうよ」
車を運転しながらママが心配そうに言った。
「池に落ちた後、この寒空の中、ウィンディのカードを使いよったからなぁ。
風邪をひいてもしゃーないで」
あたしは風邪をひいたようだ。カードを封印できたのはいいけど、また、

くちゅん!

「それより、さくら、さっきの声、聞こえたか?」
仮の姿に戻ったケルベロスがすみれに聞こえないように、さくらに尋ねた。
「うん、聞こえたよ。あれは、クロウさんじゃない」
「そや。クロウ・リードではない誰かが、一連のカードの騒ぎに関わっているっちゅうことやな。
それも、かなりの魔力の持ち主や」
「そうね」
3人を乗せた車は、帰路を急いだ。

ワードのカードさんを封印してから数日後、あたしの風邪も治って、家族みんなでテレビを見ていた。
「ママ、『すあま』さんのインタビューやってるよ」
「本当だ。山崎くん、無事に退院できたんだ。よかったぁ、元気そうで」
「山崎のやつ、入院していたんだ」
ママのとなりでパパもテレビに見入っていた。
画面では、レポーターが『すあま』さんに質問をしていた。
「今回は、過労とストレスで、一時は食事もできないほどになられたとか・・・」
「そうだよ。でも、入院した日の夜から不思議に回復したんだ」
いつものように、開いているかどうかわかんないような目で『すあま』さんは質問に答えていた。
そして、
「知ってる?ストレスっていうのはね」
きた。お約束の始まりだ。
「ほぇ〜。昔の人って大変だったんだ」
信じてしまったのは、ママ。
「ああ」
パパも、ママのとなりであいづちをうっている。
「違うよ。ストレスっていうのは」
こんな時、突っ込みを入れるのは龍平の役目だ。
「ほぇ?そうなの?」
ママのお約束の反応。
「お、俺はうそだってわかっていたぞ」
パパはちょっと顔を赤らめて腕を組んだ。
「はぅ〜。ふたりとも、どうして信じちゃうんだろう・・・」
あたしと龍平の頭に、おっきな汗が浮いた。


次回予告
ほぇ〜、からだがふわふわするよぅ〜。なんだが天井ぐるぐる〜。
そうか、ワードのカードさんを捕まえるときに池に落ちちゃったから、
風邪ひいて、学校お休みしちゃったんだ。
・・・あ、これって?ひょっとしてミラーさん?
看病してくれてたんだ。ありがとう。

カードキャプターさくらと小狼のこどもたち
すみれと魔法のピアスとカードたち

次回もすみれと一緒に
さくらと一緒に
封印解除(レリーズ)! >>NEXT

BUCK

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