番外短編


著者 特記以外すべて126氏

クリスマスなので番外編にしますた。

すみれとすてきなクリスマス


「メリークリスマス!」
パーン!とあたしはクラッカーを鳴らした。
「メリークリスマスですわぁ!」
次にクラッカーを鳴らしたのは知美ちゃん。
そのとなりで、龍平が少し怖がりながらクラッカーを鳴らした。
「メ、メリークリスマスっ」
「みんなぁ、ほんまにメリークリスマスやぁ!」
みんなの回りをサンタクロースの衣装を着たケロちゃんが飛び回る。
今日は、クリスマス前の土曜日。ほんとうのクリスマスはまだなんだけど、
週末に知美ちゃんの家でパーティをすることになったんだ。
テーブルの上には、おいしそうな料理がいっぱい。
「すごいっ。これって、ローストターキーだよね」
「はい。我が家のお抱えシェフの自慢料理ですわ」
「でも、こっちもうまそうやでぇ」
ケロちゃんがケーキを指差した。料理は知美ちゃんのところで用意してもらったけど
ケーキだけは、あたしたちで焼いたんだ。
「ちょい形は不細工かもしれんやけど、味がわいが保証したる!
このケルベロス様が、念には念を入れて味見しよったよって」
「ケロちゃん、あれは味見とは言わないの!つまみ食いっていうの!」
「そうだよ。材料の半分近く食べちゃって。材料を用意してくれた人が不思議がったぐらいじゃないか」
龍平が突っ込む。なにしろ、龍平は被害者だ。
「そしたら、お姉ちゃん、僕がみんな食べるんだって言っちゃって、誤解されちゃったよ」
「まぁ、龍くんもケロちゃんさんも落ち着いてください。ケロちゃんさんの食べる分は
計算に入れて材料はそろえたんですから」
「そうや!さすが知美やな!」
「ところで知美ちゃん、知世おばさんって、いつ帰ってくるの?」
「仕事の都合で帰れないということですわぁ」
「そんなぁ」
「心配していただくても大丈夫ですわ。冬休みは、私の方がイギリスに参りますから」
「えー、それっていいかも」
「到着はボクシングデー(26日。クリスマスの翌日の休暇のこと)になってしまいますが、
お正月までは母と過ごせますわ」
「イギリスで冬休みなんだ。ストーンヘンジなんて、行ってみたいな」
歴史ヲタクの龍平もうらやましがっている。
「残念ながら、ストーンヘンジには参りませんわ。でも、そのかわり・・・」
知美ちゃんの目がキラキラと輝く。
「ロンドンフィルで、すみれちゃんのテーマのレコーディングがありますの」
「あ、あたしのテーマ?」
「えぇ!すみれちゃんにぴったりの、かわいく、りりしいテーマができたとの母からの
連絡がございましたの!これで、すみれちゃんのビデオの編集も進みますわぁ!」
知美ちゃんが手元のスイッチを押すと、壁いっぱいにビデオが映し出された。
「これ、あたしが学校でジャンプさんを封印した時のビデオ!」
「まだ、編集は未完成ですが、これにロンドンフィル演奏の曲をつけられるなんて・・・
超絶しあわせですわぁ〜」
知美ちゃんはますますキラキラしている。
ビデオはあたしと龍平の「眠れる森の美女」に切り替わっている。
「は、はずかしいよぉ」
あたしと龍平は顔が真っ赤だ。
「はずかしがってはいけませんわぁ!」
「ええぞ、ええぞぉ!」
ケロちゃんと知美ちゃんのテンションはあがり続けていた。

ビデオはいつしか、あたしと衛(ウェイ)くんの結婚式を映し出していた。
神父さんの言葉が聞こえてくる。
「・・・新郎に永遠の愛を誓いますか?」
次は、あたしの言葉。
「誓います」
あたしはなにがなんだかわからなくなった。
「知美ちゃん、なんで、ここだけボリューム大きいのよぉ!」
「だって、花嫁姿のすみれちゃんが超絶かわいいんですもの〜」
「あれ、ただのイベントなんだからね!」
「ほほほほほ・・・」
相変わらずの知美ちゃんのまわりでは、ケロちゃんが料理をほおばりながら
「ええぞぉ、ええぞぉ」
とはやしたてていた。

その時、「気配」がした。
「龍平?」
「うん、気配だ」
あたしと龍平は窓のそばに駆け寄った。

「・・・気配が」
「消えてるね」
あたしと龍平が窓に駆け寄った時、魔力の気配はもう残っていなかった。
次にしゃべったのは、龍平だった。
「雪だよ、お姉ちゃん」

「やっぱり気づかれてしまいましたわね、エドワード」
「うん、あんなわずかな気配で気づくなんて。でも、もう終わったから、僕らも戻ろう」
「でも、こんなことをして騒がれませんか?大道寺さん宅にだけ雪を降らすなんて」
「大丈夫だよ。個人向けの人工降雪機を使ったと思われるだけさ」
「それはそうですわね。もうそろそろクリスマスプディングのあら熱も取れている頃ですし」
「じゃ、僕らもクリスマスパーティをしよう」
去り際にエドワードは大道寺宅をふりむいて言った。
「メリークリスマス、すみれさん」

雪はしんしんと積もっていく。庭のクリスマスツリーに雪がかかってとってもきれい。
「雪だよぉ、龍平、知美ちゃん、ケロちゃん、お庭に出よう!」
あたしたちは、外に飛び出した。そして突然の空からのプレゼントをしばらく見つめていた。

<番外編:終>


正月休み中にアプするかもしれない番外編予告

今日ね、家族みんなで初詣に行っておみくじをひいたの。
わたしのおみくじは大吉だったんだけど、ほえ?なんか変。
確かに「初夢の中で」って書いてあったんだけどなぁ。

カードキャプターさくらと小狼のこどもたち
すみれと不思議なおみくじ

次回もすみれと一緒に
さくらと一緒に
封印解除(レリーズ)!

番外 すみれと不思議なおみくじ

「はい、できあがり」
ママはあたしの帯をポンっとたたいて言った。
「すみれちゃん、帯、苦しくない?」
「ううん。大丈夫だよ、ママ」
あたしは鏡の前でくるっと回ってみる。
そこに映っているのは、いつもとはちょっぴり違う着物を着たあたし。
「いやー、着物を着るとすみれでもおしとやかに見えるもんやなぁ」
ケロちゃんがからかったように言う。
「すみれでもって、なによ!そんなこと言うと、おみやげ買ってきてあげないからね!」
「すまん、すまん。言葉のアヤや。堪忍してぇな、すみれ様・・・」
ケロちゃんがおおげさに謝る。
でも、これがお正月のお約束のやりとりであることは、みんなわかっている。
すぐにあたしたちは、くすくすと笑いだした。

今日は元旦。これから家族みんなで月峰神社に初詣に出かけるんだ。
それで、ママに振袖を着せてもらった。すみれの花をあしらった、とってもかわいい着物。
あたしは自分では着物を着られないけど、ママは小学生の時から自分で着られたんだって。
それってすごいと思う。
「あたしもママみたいになりたいな」
「ほぇ?すみれちゃん、なにか言った?」
「ううん、なんでもないよ、ママ」
「でも、初詣に神社って、ちょっと変よね。なぜお寺にいかないのかなぁ?」
「??・・・ママ、突然何言い出すの?」
「だって、元旦というのは昔中国の偉いお坊さんの元旦さんと言う人が1月1日に生まれて、
それを祝う日なんでしょう?だったら、お寺に初詣するのが本当かなって思って」
「ママ、どこからそんなことを聞いたの?ひょっとして・・・」
あたしの頭におっきな汗が浮く。
「うん、ディナーショーで山崎くんが言ってたんだ」
・・・まただ。
あたしたちが知美ちゃんのお家でクリスマスパーティをしていたころ、
ママとパパはデートをしていた。それはいいんだけど、ふたりのデートコースは
『すあまのクリスマス・ディナーショー』。
そこで、ふたりはいっぱいうそを信じちゃったんだ。
それから、ふたりに突っ込みをいれることであたしと龍平はちょっぴり疲れていた。
「ママ、あれはうそなの。あ・れ・は・う・そ!」
あたしは、背伸びしてママに訴える。
「ほぇ?そうなの?」
その時、咳払いが聞こえた。部屋の入り口を見ると、パパと龍平が立っている。
「お、おれはうそだとわかっていたぞ」
少し照れたように言うパパのそばで、龍平がはぅーっという顔をしていた。

「次は、わたしが着物に着替えるから。小狼くん、ちょっと待っててね」
ママはそう言うので、あたしたちはリビングで待つことにした。


「お待たせー」
ママが2階から降りてきた。
「さくら・・・」
「ママ・・・、どうしたの?」
振袖を着たママは、カードを集めていたころの姿に戻っていた。
「えへ。すみれちゃんの着物を見てたら、わたしも振袖が着たくなっちゃったの。それに・・・」
ママはいたずらっぽく、パパに向かって言った。
「この方が、小狼くん、喜んでくれそうだもの」
パパは返事ができない。そのかわり、顔が真っ赤になっていた。

「いってきまーす。ケロちゃん、お留守番お願いね!」
「おぅ!おみやげ忘れんといてやー!」


あたしたちは月峰神社に向かっていく。
「すみれちゃん、今年は何をお願いするの?」
ママに聞かれたあたしは、指を折って数えだした。
「えっと、ママとパパが今年もラブラブでいてくれますようにでしょ、
あと算数の成績がもうちょっと上がりますように
あとあとお料理が上手になりますようにと
中国拳法がもっと上手になりますようにと・・・」
すると、パパと龍平が同時に口を開いた。
「すみれ」
「お姉ちゃん」
「「いくらお賽銭入れるつもり?」」

お正月の月峰神社は、例年どおり参拝客でいっぱい。
「お姉ちゃん、あれ」
最初に気づいたのは龍平だった。
「あれ、桃矢おじさんに衛(ウェイ)くんに張(チャン)教授じゃない?初詣に来てたんだ」
やがて、向こうもこちらに気づいたようだ。
「あけましておめでとうございまーす!木之本さーん!」
大きく手を振ってあいさつしてくれたのは衛くんだった。

「あけましておめでとうございます」
「お久しぶりです。結婚式以来ですわね」
「そうですね。あの時はお世話になりました」
パパと張教授があいさつを交わす。そのそばで、桃矢おじさんがあたしにこっそりと話し掛けた。
「どうして、さくらのやつ、かすみになっているんだ?」
桃矢おじさんは、今は魔力はないんだけど、ママとミラーさんの区別だけはつくみたい。
「どうしてって・・・かすみちゃんになったんじゃなくて、振袖を着てみたくなって
それで昔の姿にもどってるんだけど・・・なにか?」
「いや、いいんだ。今日、日本のお正月を紹介するってことで月峰神社にふたりを案内したんだけど
張教授に『かすみちゃんはいませんの?』って聞かれて、すみれのうちに遊びに行っていると
ごまかしていたとこなんだ。すまんが、話合わせてくれ」
「うん」

「あけましておめでとうございます。去年の結婚式、楽しかったです」
ママは木之本かすみになりきってあいさつしている。
「あけましておめでとうございます」
張教授はすぐにあいさつを返してくれたけど
「衛くん、あけましておめでとう!」
ママがあいさつすると、衛くんは真っ赤な顔をして
「あ、あけまして・・・おめでとう・・・ございます」
「ほぇ?」
ママはきょとんとする。その様子を見てると、あたしはちょっぴりおもしろくなかった。
そして、気のせいかパパも衛くんをにらんでいたような気がする。

「そういえば、さくらさんがいらっしゃいませんね?せっかくの初詣なのに、なにかご用事でも?」
「え?あの♂∋∃Å!」
張教授の質問にママがあわてている。そこであたしが言った。
「ママはけさ、キッチンでこけて、せっかく作ったおせち料理を床に落としちゃったんです。
それで、今、作り直しているところなんです」
「まぁ、それは大変!意外におっちょこちょいなんですね、さくらさんは」
張教授がくすっと笑う。
あたしたちもつられて笑った。
けど、
「!」
あたしは、ママに腕をつねられてしまった。

みんなで本殿でお参りした後、桃矢おじさんが言った。
「大人は、あちらの休憩所で休んでいるから、みんなは好きなところを見ていていいよ。
さくら、じゃなかった、すみれ、時間になったらケータイに連絡入れるから」
「うん、わかったよ。おに・・・じゃなかった、パパ」
「じゃ、どこから行こう?」
龍平が聞くと、あたしは提案した。
「おみくじ引いていかない?」
あたしたちは、最初におみくじを引くことにした。
だって、月峰神社のおみくじはよく当たるって評判だもの。

「ここで、おみくじが引けるんだよ。ほぇ〜!そこにいるのは?」
おみくじを売っていた巫女さんは、担任の神宮司先生だった!

「木之本さんじゃない!お正月から衛くんとデート?先生、うらやましいなぁ」
「そ、そんなんじゃありません!」
「大丈夫、クラスのみんなには黙っておくから」
「だ、だから、そんなんじゃないんですって!」
「あら、龍平くんも女の子と一緒ね。大道寺さんがイギリスにいるからって、いいのかな?」
「え、先生」
龍平が言葉に詰まっていると、ママが先生にあいさつをした。
「木之本かすみです。龍くんのいとこです」
「そうなんだ!なーる、それでふたりともそっくりなんだ!」
次は、ママが質問する番だった。
「あの、どうして、学校の先生がここでおみくじ売っているんですか?」
「私、ここの神主さんの親戚なの。お正月は忙しいからお手伝いしてるってわけ」
「親戚って、歌帆先生の?」
「よく知っているわね。でも遠い親戚だから、何回も会っているわけじゃないの。
さぁ、そんなことより、うちのおみくじ当たるわよ。出席番号順に引きなさい!」
先生は、おみくじの入った箱をあたしたちに突き出した。あたしたちは名前順でおみくじを引いた。
まず、衛くん。
「13番です」
『かすみ』でも『さくら』でも2番めになるから、次はママの番だ。
「42番だ」
その次はあたし。
「75番ください」
最後の龍平は8番だった。

くじの番号を見て、神宮司がおみくじを4人に渡し始めた。
「はい、すみれちゃんのは75番ね。あれ?」
「どうしかしました?」
すみれが聞くと、神宮司は首を振った。
「なんでもないよ。大吉だといいね」
おみくじを渡した後、先生は自分の手のひらを見つめていた。
(今、一瞬、手が妙に熱くなったけど・・・気のせいか)
そんな神宮司を見て、エドワードはつぶやいた。
(さすが柊沢さんの親戚だけあって、ぼくの魔法の媒体になれる程度の魔力はある)
「先生、ぼくの分は」
「あ、ごめん。じゃ、これ、龍平くんの分ね。8番」

あたしたちは、おみくじを読み出した。ちょっとどきどき。
「凶だよ。『願望:終には叶うが犠牲多し』だって」
最初にがっかりしたのは、衛くんだった。
「大丈夫だよ、衛くん」
あたしは、そばにある木を指差した。
「悪いおみくじは、あの木に結んでしまえば、悪運は付いて来ないんだよ」
「え?そうなの?」
衛くんは木に駆け寄って、おみくじを結びつける。
「日本のおみくじって、都合いいんだね」
「そ、それを言ったら、身もふたも・・・」
正直すぎる感想に、あたしたちの頭に汗が浮いた。

「ぼくのは、小吉だって。『苦難あれど終には成就』みたいなことばかり書いてあるよ」
次に声を上げたのは龍平だった。
そして、ママはおみくじを広げて、くるくると回っていた。
「やったぁ!大吉だよ!『恋愛:この人より他になし』だって!小狼くぅん!」
ママは3、4回まわったところで
「じゃあ、すみれちゃんのおみくじは?」
「うん、今、見るね。ほぇ?」
おみくじに書いてあったのは不思議な文章だった。

『真実を探る手立ては初夢の中に』

「このおみくじって変。吉とか凶とか書いてないよ」
あわてて、あたしはおみくじをママに見せる。
「変って、大吉じゃない?」
ママの不思議そうな顔を見て、あたしはおみくじを見直した。
そこにあるのは、普通の『大吉』のおみくじだった。
「おかしいな?初夢の中とか書いてあったのに?」
でも、今は確かに普通のおみくじだ。それをのぞきこんだ衛くんが言った。
「衛家に伝わるおまじないなんだけど、縁起のいいおみくじを寝間着に縫いこんで寝ると
幸運が逃げなくなるんだって」
「寝間着に縫いこむなんてできないよ。おみくじがくしゃくしゃになっちゃうし」
「そうゆう場合は、パジャマのポケットに入れて寝るだけでも効果があるって、母さんが言ってた」
「そっか。それならできるよ。今晩やってみる」

「じゃあ、次はみんなで甘酒でも飲みに行かない?」
ママの提案に、みんなが賛成した。

その晩、あたしは一番おっきなポケットのあるパジャマを着て寝ることにした。
「女の子っていうんは、ほんまおまじないとか好きなんやな」
「だって、せっかくの大吉だよ」
あたしは、今日のおみくじをポケットに入れる。
「じゃあ、おやすみなさい。ケロちゃん」
「おやすみ、すみれ。いい夢見いや」

そして、ケロちゃんは電気を消した。

「あれ?」
あたしはまっしろな部屋にいる。部屋にはベッドがひとつ。
ふとんには李家の祭祀で使う紋章が入っていた。
「龍平?」
ベッドに寝ているのは龍平だった。
肩で息をしている。苦しいはずなんだけど、龍平の表情は不思議に安らかだ。
「どうしたの龍平?どこか悪いの?」
龍平の口元が動く。え?聞こえないよ?
なにか言っているようだ。でも、でも・・・
「龍平、龍平ったら。ママ、このまま龍平が」
「・・・すみれちゃん」
あたしはママの顔を見た。
「・・・すみれ」
声の方を向くと、そこにはパパがいた。
「・・・すみれさん」
別の声の方を向くと、そこにいたのは、エリオルおじさんだった。
「すみれ、すみれ!」
あたしは、ケロちゃんの声で目が覚めた。
「ど、どうしたの、ケロちゃん?」
「気づいたか、クロウ・カードや!」
「ええっ!」
まわりを見渡すと、あたしはシールドの中にいた。
シールドの外では、ママとパパが心配そうな顔をして立っている。
「パジャマのポケットや!」
ケロちゃんが、あたしのパジャマのポケットを押さえている。
「この中に、クロウ・カードがいよる!
さくらのシールドで外へは逃げれんよって、今のうちに封印や!」
「うん!」

あたしは急いで呪文を唱えだした。
「光の力を秘めし鍵よ。真の姿を我の前に示せ。契約の下、すみれが命じる」
「封印解除(レリーズ)!」
あたしが封印の杖を手をすると、ケロちゃんはポケットから離れた。
同時に、ポケットからクロウ・カードが逃げ出した。
「今や!」
「うん、汝のあるべき姿に戻れ!クロウ・カード!」
あたしの手に、封印されたカードが滑り込んできた。
「昼間のおみくじが、クロウ・カードだったんやな。すみれ、おみくじに変なとこなかったか?」
「うん。実は、一瞬だけ変な文章が書いてあったんだ」
そう言いながら、カードを見る。
「これは・・・ドリームのカードやないか?すみれ、今、どないな夢を見とった?」
シールドの魔法を解いたママと、パパが駆け寄ってくる。
あたしは、夢の内容を話した。
「龍平がベッドにか・・・」
パパが腕を組んで考え込んでいた。
(李家の紋章が入ったふとんは、ただのふとんじゃない。魔力にダメージを受けた者の
治療に使われる、特別なものだ。それがあるのは・・・)
「ドリームは予知夢を見せるカード。おまけに、あの姉ちゃんの神社のおみくじや。
こりゃ、近い将来、龍平の身に何かが起こると考えた方がええな」
「シールドを使っていてよかったわね。今の騒ぎ、龍くんには気づかれていないはずだよ」
「ママ、龍平、どうかなっちゃうの?」
「すみれちゃん、その夢にはママもいたんでしょ」
「うん。パパもいた。エリオルおじさんもいたよ」
「だったら、絶対大丈夫だよ」
あたしは、ママに抱きしめられた。
「ママも、パパも、エリオル君もいる。すみれちゃんもいる。
だから何が起きても絶対、龍くんは大丈夫。
今夜は、ママがそばにいてあげるから、すみれちゃんは安心してお休みなさい」
「・・・うん、ママ、ありがとう」

<すみれと不思議なおみくじ:終劇>

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