祭り記念

著者 126氏?

祭りでつので・・・

「すごい・・・」
ここは、玖楼国の城からそれほど遠くない、小さな家。
その家の中で、その若者は何かを机の上に広げ、見入っていた。
「こんな文字は見たことがない。この国のものなんかじゃないんだ・・・」
若者は、家具の上にある写真に、視線を向ける。
「父さん・・・」
その時、

どんどんっどん

その小さな家のドアがノックされた。

「はい」
若者がドアを開けると
「小狼!」
「わっ!」
いきなり抱きついてきたのは、その若者と同い年の少女であった。

どさっ

勢いあまって、ふたりは床に倒れこむ。

「おかえりなさい!遺跡の発掘どうだった!?怪我は!?
熱とか出なかった!?ごはん、ちゃんと食べてた!?」
そのままで、少女は次々と若者に質問をあびせかける。
「は、はい。大丈夫でした」
若者が、そう答えると
「敬語、ヤだって言った」
少女がつめよった。
「でも、姫・・・」
「さくらって呼んでって言った」
少女は、ほっぺたをふくらませて抗議する。
「はい、あ、いや、う・・・うん」
少女の機嫌はまだ悪い。
「さ、さ・・・さくら・・・」
その名前を呼ばれると、少女の顔に笑みが広がった。そして、
「ごめんなさい!重いよね!」
あわてて、さくらと呼ばれた少女は、若者の上から身体を起こす。
そして、さくらは小狼という名前の若者の前ですわりなおした。
「ほんとに、おかえりなさい。小狼」
「だだいま。良くわかり・・・わかったな。俺が帰ってきたって」
「今日、遺跡発掘隊の人たちがお城に来るの。発掘隊の人がお城に来るなら、小狼も
お家に戻ってきてると思ったんだ」
そう言うと、さくらは、ぴょこんと立ち上がった。そして
「これ、なんなの?」
先ほどまで小狼が見入っていたものを指差して聞いた。
「遺跡の拓本だよ」

「遺跡の壁に彫られていたんだ。見たこともない様式の家と、その家に住む4人の人たち、
それに羽の生えた動物が彫られている。そして、その回りの碑文は、発掘隊の誰も読めなかったんだ。
文字の種類が1000は超えているから・・・」
そうしゃべりながら、小狼はあることに気が付いた。
発掘から戻るたびに、さくらは発掘での出来事を聞きたがる。
だが、このお姫様は遺跡そのものにはあまり興味がない。小狼が持ち帰る遺物に興味を持つこと
なんて、これまでなかったのだ。それが拓本をじぃーっと見つめている。
「小狼、わたし、この家、知っているよ」
「え?」
小狼は驚いた。
文字だけでなく、遺跡に彫られていた家もまた、発掘隊の誰もが知らない様式だったからだ。
「知っているって、どこで?」
「夢の中!」

コケた小狼に、さくらは喜々として話し出した。
「この家は、魔法使いの一家が住んでいるの。お父さんとお母さんは小さい頃に知り合って
結婚して、男の子と女の子の双子の子どもがいるの。子どもたちも魔法使いで・・・」
他愛のない話だが、小狼は不思議と聞き流すことはできなかった。

この時、小狼は、さくらが語る、その一家が自分たちと同じ名前を持つことを知らなかった。
そして、さくらもまた、その夢が、さくらの持つ「次元を超える力」がほんの少しだけ
発動したためだということも知らなかった。

「でね、その魔法使いの名前がね・・・なんと!(さくらと小狼なの!)」
最後の一言を言おうとしたところで

リーン ゴーン

大音響が響き渡った。
「お城の鐘だ。もう、夕刻なんだな」
話を途中でジャマされて、さくらは床にコケていた。
よろよろと起き上がると
「鐘が鳴ったから戻らなきゃ」
「送っていくよ」
「ううん、小狼、お仕事で疲れてるもん。大丈夫。ひとりで帰れるよ」
そう言って、さくらは小狼の家を出た。
(なんか、お城の鐘で兄様に邪魔されたような気がする)

その頃、城では・・・
「うむ、下がってよい」
鐘の担当を下がらせた若き王に、幼なじみでもある神官が近づいた。
「民が迷惑をこうむります。姫が出かけた時に夕刻の鐘を早く鳴らすのは考え直してください。
いくら、妹姫が可愛くてもね、桃矢」
「うっせい」

この時、もうひとつの物語はまだ始まっていなかった。

<祭り記念:終劇>

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